ケトプロフェンの光分解メカニズムに関する研究

非ステロイド系抗炎症薬は鎮痛薬として広く医薬品に用いられていますが、一方で近年、光アレルギーなどの光線過敏症の症例が報告されています。しかし、その光反応初期過程における反応機構については、よくわかっていません。我々は、代表的な非ステロイド系抗炎症薬の一つであるケトプロフェン(KP) の光反応について研究を行っています。


 トリエチルアミン(TEA)との光反応についてえられた結果を下図に示します。メタノール溶液中ではカルボキシル基を有する KP は TEA 存在下で酸塩基平衡状態にあります。平衡状態にある KP を光励起すると短寿命の励起三重項状態KPが生成し、速やかな脱炭酸反応を経て、カルボアニオンとなります。カルボアニオンは、酸塩基平衡で生成した TEAH+ と拡散律速でプロトン移動反応を起し 3-EBPH を生成することが初めて明らかになりました。さらに、3-EBPHはTEAと錯体を形成することもわかりました。
 これら TEA 存在下での KP の反応機構から、生体内においても KP の光反応初期過程においてアミンは重要な役割を果たしていることが示唆されます。生体内におけるケトプロフェン光反応初期過程を理解する上で非常に重要な知見だと考えています。今後、更に生体系に近い環境場での反応機構を明らかにしていく予定です。