私たちの研究室では、レーザーを用いて分子の構造や反応・緩和過程(エネルギーの流れ)を時間分解で調べています。また,蜃気楼現象を応用した光熱分光去を駆使して,反応の追跡しています。例えばDNA/RNA塩基の光反応や光線過敏症を引き起こす医薬品の反応について、物理化学の視点から研究を行っています。さらに、マイクロリアクターを用いた光反応や光不斉反応、光触媒反応への応用についても研究を進めています。


超音速ジェット分光法を用いた分子やクラスターの構造(大振幅振動、弱い水素結合)
  超音速ジェット法を用いると、絶対零度近くに分子を冷却することができます。冷却された分子にレーザーをあてると、その応答から分子の構造に関する情報を引き出すことができます。さあ、分子のかたちはどうなっているのか? さあ、分子の声を聴いてみよう!

チオおよびアザ置換核酸塩基の構造と緩和過程(超高速項間交差、円錐交差、光線力学療法)
  A、G、T、CとU、これってみなさんご存知ですよね? そう、核酸塩基です。DNAやRNAの重要な構成要素です。その一部を改変したチオ置換またはアザ置換核酸塩基は、とても不思議な性質をもっています。それを利用すると、光線力学療法(PDT)というがん治療への新たな道が見えてきます。

非ステロイド系抗炎症薬の光反応の研究(薬剤性光線過敏症、活性酸素、光アレルギー)
  薬剤性光線過敏症って知っていますか? 非ステロイド系抗炎症薬が引き起こす光毒性や光アレルギーが、どのような機構で発症するのか? レーザーを用いて、その反応の初期に何が起きているのかのぞいてみると? 私たちはその反応機構の解明に挑んでいます。

光検出光音響法を用いた2光子吸収スペクトルの測定と分子の電子状態(2光子遷移確率、分子ワイヤー、光線力学療法)
  分子は通常1つの光子(光はエネルギーの粒子とみなすことができます。これを光(量)子と呼びます)を吸収して、励起状態と呼ばれるエネルギーの高い状態に変化します。しかし、レーザーを照射すると一度に複数個の光子を吸収することがあります。これを多光子吸収と呼びます。私たちの研究グループは、光熱分光法の一つである光音響法を応用した「光検出光音響法」を用いて、分子ワイヤーとなるポリイン類の非共鳴2光子吸収スペクトルの測定に成功しました。対称性の良い分子では、1光子で生じる励起状態と2光子で生じる励起状態は異なります。さてさて、分子にはどんな励起状態が存在しているのかな?

マイクロリアクターを用いた光反応・光不斉反応と光触媒反応
(環境負荷物質の光分解反応、二酸化炭素の還元反応)
  マイクロリアクターとはなんでしょう? マイクロメーターサイズの流路をもつマイクロチップを新しい反応場として、光触媒反応や光不斉反応に挑戦しています。環境負荷物質を効率よく分解できるとか、光不斉反応をコントロールできるとか、多段階の酸化反応・還元反応を一度に進めることができるとか。たくさん新しい実験事実が明らかになってきました。まだまだ、研究は始まったばかりです。どんな新しいことができるかな?


光波長変換アップコンバージョンの研究(エネルギー移動、遅延蛍光)
  光の波長変換ができると、様々な応用が生まれます。そこで、長波長の光から波長の短い光を生み出すアップコンバージョンの研究を行っています。どんな分子を選んだらいいの? どんなメカニズムで? その効率を上げるには? などなど、実用化までの可能性を探っています。

科学捜査のための分光測定法の研究 
  
分子の吸収や発光スペクトル測定は科学捜査にも広く用いられています。私たちの研究室では、新しい分光技術を科学捜査に応用できるか、挑戦しています。